こんんちは。
リブレクト代表の崔です。
先日、久しぶりに上京した甥っ子(とその家族)を連れて、都内の人混みの少ない「池袋防災館」に行ってきました。
何でも、3歳の甥っ子は今消防車にドハマりしているらしく、当初はせっかく東京に来たのだからと、四谷にある「消防博物館」に行こうとしていたのですが、地方からの上京で人混みに慣れていないことと、密を避けるということで、近場の池袋で済まそうということになりまして、私自身は池袋防災館は学生時代以来の訪問となりました。
池袋防災館では、ちょうど外で消防訓練のイベント(のリハーサル?)が行われておりまして、火災の現場の緊迫感を再現した訓練姿を見ることができ、普段忘れがちな火災の怖さや火災に強い建物の重要性を改めて感じることが出来ました。
そんな矢先に、一昨日大阪の北新地で放火火災が発生したとの痛ましい報道を見ましたので、今回はこの時期に多い火災について書いてみたいと思います。
◆都内の火災発生件数は年々減少している
人口密度が高く、住宅が密集している東京都内ですが、火災の発生件数は年々減少しております。
建物の耐火性能の向上や、木密地域の建て替えの進行、ガス・電化製品の安全性向上、喫煙者の減少等、理由は様々かと思いますが、火災による死亡事故も減少傾向にありますので、とても良い傾向かと思います。
火災全体における住宅火災の推移は下図の通りですが、
住宅火災件数に関しては、令和元年よりも令和2年度の方が若干増えてしまっておりますね。
また、住宅火災の出火原因は下図のようになっております。
1位の「こんろ」と2位の「たばこ」に関しては建物の中から、3位の「放火」に関しては建物の外または共同住宅の共有部分で多く発生しておりますので、火災に強い建物について考える場合、建物の中と外の両方に対してしっかりと対策をしてあげる必要があります。
東京都内、特に23区内においては、その殆どの地域が都市計画によって準防火地域、新防火地域、または防火地域に指定されておりますので、新築住宅を建てる場合にはある程度の耐火基準を満たす建物を建てなければなりません。
これによって住宅火災は年々減少しているものと思いますが、実は準(新)防火地域、防火地域内であっても、建物の全てを燃えない・燃えにくい素材にしなければいけないということにはなっておらず、敷地内や建物内で「延焼の恐れがある場所」には燃えにくい、または燃えない素材を使用しないといけないことになっておりますが、延焼ラインに入っていない箇所に関しては、必ずしも耐火素材を使わなくても良かったりします。
また、2階建て住宅と3階建て住宅、4階建て以上の住宅に関しても、法律で求められる耐火の仕様は変わってきますので、一概に全ての建物が安全だとは言えないのが現状です。
これから住宅を買われる方はもちろんですが、既に住宅を買われている方、賃貸住宅に住まれている方も含めて、ご自身が住まれる建物の火災対策はどのようになっているか、について、今一度しっかりと確認し、対策を取っていただきたいと思います。
そこで、火災に備える対策として、考えておいていただきたいポイントがいくつかありますので、以下に記載いたします。
①まず避難経路を確保する。確認する。
個人的にはこれが何よりも一番重要だと思っております。
この度の北新地の火災に関する報道でも言われており、過去にも新宿歌舞伎町の雑居ビル火災や、広島の流川町での雑居ビル火災の時にもやはり言われていたことですが、雑居ビルに限らず一般住宅においても同じことが言えます。
火災で亡くなる方のほとんどは、火の手より先に来る煙による一酸化炭素中毒で意識が無くなり、身動きが取れなくなることと言われております。
火災が発生した場合、建物がいくら燃えにくい素材で出来ていたとしても、一酸化炭素や有毒ガスを吸ってしまうと大変危険ですので、一刻も早く非難することが重要となりますが、その避難経路に関して、普段から意識しておくことが大切です。
多くの方は、火災が発生すると、普段通っている経路を通って避難されようとすると思いますが、以前に防災機器メーカーの方とお話しをした際に言われたこととして、「火災で逃げ遅れる方の多くは、火災発生時に普段の経路が何らかの理由で使えなくて、代替経路を探しているうちに煙を吸ってしまう」ということが、今でも印象に残っております。
私が住宅の仲介をさせていただく際には、必ずと言っていいほど重要事項説明時にこの話しをさせていただくのですが、上の図にも記載のあるように、住宅火災のうち、約1割を占めるのは「放火」とあります。
放火は建物外部にいる人が建物に火をつけてしまうケースが多く、そこから火の手が広がってしまうと、普段使用している正面玄関が使えなくなる場合があります。
その場合に、1階に他の開口部があればそこから逃げ出すことが出来ると思いますが、例えばその開口部の窓に防犯用の面格子がついていたとしたら、もしくは、シャッターが下りていてすぐに出られなかったとしたら、はたまた、何とか出られたのは良いけど、隣地との間隔が狭く、その上エアコンの室外機が行く手を阻んだとしたら、など、様々な危機的状況を想定しておかないといけません。
他にも、築浅の3階建て建物の場合、3階の道路側に向けた窓が「非常用進入口」となっておりますが、非常用進入口を家具でふさいでしまっていたり、3階の非常用進入口から地面まで中継する場所がなかったり、速やかに避難が出来ない状況も起こり得ます。
このように、居住用の住宅であってもあらゆる火災の状況を想定し、これから建物を建てる方は建築プランの確認を、既に建っている建物に住まれる方は避難経路の確保・確認を必ず行ってください。
②延焼を抑える間取り配置
次に意識していただきたいポイントとして、火の手が広がり易い間取りや家具の配置を避けるということがあります。
火の手や煙は横よりも縦に広がり易い性質を持っておりますので、特に縦に火の手が伸びないような工夫をしてあげることが重要です。
住宅内部で言いますと、階段室や居室内の吹き抜け部分が特に注意が必要です。
階段はどうやっても吹き抜けなければならないので、吹き抜けさせるしかないのですが、普段の生活の中で階段から火が付くケースは少ないので、他の部屋から階段に繋がる経路上に延焼を防ぐ対策をしていただくことが重要です。
4階以上の建物の場合、法律によって階段を居室を分ける造りになっておりますので、その対策が出来ている建物の場合は多少安心できますが、3階建てでも、2階建てでも、階段や吹き抜けは火の手が最も広がり易い場所でもありますので、その点をご理解いただいた上でしっかりと対策を講じていただくよう、お願いいたします。
③有毒ガスを発生させる素材を置かない
生活に使用する物の中には、燃えると有毒ガスが発生してしまう物が少なくありません。
衣類等にも化学繊維は使用されておりますので、全ての有毒ガスを避けるのは難しいと思いますが、例えばカーテンやクロスような大きな物には、可能な限り燃えにくい物、燃えても有毒ガスを発生させない物を選んでいただきたいと思います。
欲を言えば、住宅に使われる断熱材も、有毒ガスが発生しない物を選んでいただきたいです。
都内の住宅で最も一般的に使われている断熱材のグラスウールなどは、燃えにくいという点ではかなり優秀で、他にも以前は危険とされていたウレタンフォームや木質系、自然系の断熱材も、昨今では延焼実験を重ねながら改良を重ねに重ね、かなり燃えにくい物になっておりますので、これから住宅を建てられる方は普段は目にしない断熱材のことについても意識されてみてください。
後は、部屋を散らかさないことも大事ですね。
物が多いとその分燃える物も多く、燃え広がる時間も短くなったり、有毒ガスの発生を阻止できなかったり、またそれにより避難が遅れたりと、火災時においては危険しかありません。
普段から部屋を散らかさない癖をつけてください。
(毎回自分にも言い聞かせておりますが。。。)
④火災報知機を設置し、まめに動作確認をする
今では義務になりましたので、新築住宅には標準で付いておりますが、住宅用火災報知器の設置も忘れてはなりません。
設置するだけではなく、ちゃんと動作するかを定期的に点検をすることを強くお勧めいたします。
火災に関しては発見が早ければその分リスクを減らせます。
最悪建物の延焼は止めることが出来なくても、逃げることはでき、生き延びることができます。
万が一火災が起きた際に、速やかに気が付ける仕組みを構築することはとても重要になりますので、こちらも法律に沿って設置するのはもちろんですが、最低限の設備では無く、安心して生活ができるくらい確かなものの設置を推奨します。
さらに、できれば自動で通報してくれる警備会社の設備の導入も検討されてみてください。
以上、火災に備えるために重要なポイントについて書かせていただきました。
人の命が関わることですので、少々長くなってしまいましたが、これからの季節は空気がとても乾燥し、火災も起きやすい時期でもありますので、どうか皆様も火災に対する備えについて、今一度しっかりと考えてみてください。
私も住まいをご紹介する立場として、火災に対する対策については今後もしつこいくらいに訴求していきたいと思います。
火災に強い家を作るご相談につきましても、
こちらまでお気軽にご相談くださいませ。